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福岡地方裁判所 昭和44年(ワ)1450号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕そこで、事実摘示中の原告らの再抗弁について判断する。すなわち、原告らが本件家屋の所有権を取得するにいたるまでの経過、本件家屋についての被告らの占有状況および被告らの右各占有部分についての賃貸借または転貸借の事情に関する各事実は、いずれも前記のとおりであり、原告らの本訴提起の日が昭和四四年九月三〇日であつたこと、原告らが、被告岡部正、同加野錦平の原告ら主張の不信行為を原因とし、被告ら訴訟代理人出頭の昭和四四年一二月二三日の本件口頭弁論期日において陳述された原告ら提出の同日付準備書面をもつて、同被告らに対し、前記各賃貸借契約解除の意思表示をしたことは、いずれも、本件記録に照らして明らかであるところ、これらの事実に、<証拠>を総合すると、被告岡部正の前記占有部分は、同被告がその建築資金を負担して建築し、被告加野錦平の前記占有部分は、同被告がその建築資金を負担して建築したものであるが、前記古賀平七と同被告らとの間においては、もともと、それらの建築後はこれらを名実ともに右古賀平七の所有とすることの合意が成立していたものであつて、それらの建築の際の建築許可申請は、いずれも右古賀平七名義をもつてなされ、建築後は、前記のとおり、登記簿上、右古賀平七所有名義の本件家屋一棟となされていること、原告らおよび原告東義治の妻訴外東フミは、原告らの本件家屋に対する所有権取得の直後である昭和四四年七月五日ごろ、賃料を改訂したうえで引き続き本件家屋を賃貸するつもりで、被告岡部正、同加野錦平らに対し、それぞれ、右フミが同月四日福岡地方裁判所裁判所書記官から証明を受けて持ち帰つた原告らの本件家屋に対する競落による所有権取得を証明する書面(甲第三号証)を示したうえ、競落によつて本件家屋の所有者が原告らに変つたことを告げるとともに、その賃料を前記古賀平七に支払つて、賃料の二重払いをすることのないよう注意したところ、同被告らは、その際、原告らに対し、本件家屋は同被告らの所有であつて、原告らには関係がないから帰つてもらいたいとか、あるいはまた、本件家屋は同被告らが建築したものであつて、一切は訴外友納恵生にまかせてあるとかなど応答して、玄関払いにも等しい応待振りであつたこと、そして、その後、前記友納恵生が右被告らの委任を受けたと称して、同年八月中に二回ほど原告東方を訪れたことがあつたが右被告らの本件家屋は同被告らの所有であるという態度は、終始変ることなく、同被告らから原告らに対し、本件家屋を賃貸してもらいたいとか、本件家屋の賃料を改訂してもらいたいとかなどの申入れがなされたことは一度もなく、したがつて、原告らが同被告らに対し、本件家屋の賃貸借についての申入れをこばんだことも、もとよりなかつたこと、ところが、被告加野錦平は、同年九月一〇日、被告岡部正は、同月一一日、いずれも福岡法務局に対し、弁済提供の事実などは存しなかつたにもかかわらず、弁済の受領を拒否されたとして、しかも、前記のとおり原告らが競落してその所有権を取得した宅地のうちの同被告らの本件家屋の各占有部分の敷地部分についての賃料名義のもとに、原告ら不知の間に、各月額金二、〇〇〇〇円の割合による金員の弁済供託をなし、それらの供託通知書が原告らに対し原告らにとつては突如として、送られてきたこと、そこで、原告らは、本件家屋を継続して右被告らに賃貸することはもはや不可能と考え、前記のとおり同月三〇日、本訴を提起するにいたつたこと、もつとも、右被告らは、原告らの本訴提起後、前同法務局に対し、本件家屋のうちの前記各占有部分についての賃料として、弁済の供託をなしたが、被告加野錦平のそれは、同月二〇日以降のことであつて、いずれも、前記の同被告らの不信行為を原因とする原告らの賃貸借契約解除の意思表示が記載されている準備書面の日付ならびにその本件口頭弁論における陳述の日である昭和四四年一二月二三日よりはるかに後のことであり、しかも、それらの供託金額は、いずれも前同様、月額金二、〇〇〇円の割合によるものにすぎなかつたことをそれぞれ認めることができ、<証拠排斥略>他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

右各事実によると、原告ら主張のように被告岡部正、同加野錦平がそれぞれの賃借権の放棄をなしたとなすことはいまだできないけれども、同被告らの右各所為は、賃貸借当事者である原告らと同被告らとの間の相互の信頼関係を破壊して、それらの賃貸借関係の継続を事実上不可能に近いものとならしめるかもしくは少くとも著しく困難とならしめるほどの不信行為にあたるものと認めるべきものであるから、原告らが昭和四四年一二月二三日同被告らの右不信行為を原因として同被告らに対しそれらの賃貸借契約の解除の意思表示をなしたこと前認定のとおりである以上、原告らと同被告らとの間の前記各賃貸借契約は、右の昭和四四年一二月二三日をもつて解除され、被告組合もまた、これと同時に、原告らに対する関係において、その占有部分に対する占有権限を喪失するにいたつたものと解するのが相当である。(桑原宗朝)

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